
yamabato
読書忘備録
●性格とは状況で変わるあいまいなもの
性格診断の結果をどんな状況でも当てはめようとすると、それがバイアスになり、正しく認知することができなくなる。他人の性格診断を信じて、それを常に適用しようとしてしまうと、偏見を生んだり差別を助長したりする可能性がある。
偏見や差別の弊害を被るのは他人だけではない。自分に対しても、性格診断結果を信じて、どんな状況でもあてはめようとすると同じことが起こる。いわば、自らをステレオタイプで見ている状態である。P244
『三浦麻子 - 「答えを急がないほうがうまくいく」あいまいな世界でよりよい判断をするための社会心理学』
元ネタは 「Fennesz - Endless Summer」
本当は状況のほうに原因があるのに、人物の性質などの
内的要因に原因があると考えてしまう現象を、
社会心理学では「基本的な帰属の錯誤」という。
帰属の錯誤は、問題が起きたときにその原因を間違えてしまう現象であり、「基本的な」と冠されているのは、状況より本人のほうに原因があると考えてしまうというのが多くの人々に見られる基本的な傾向であることを表している。基本的な帰属の錯誤が起こると、問題の根本的な解決を図ることができなくなる。P69.70
『三浦麻子 - 「答えを急がないほうがうまくいく」あいまいな世界でよりよい判断をするための社会心理学』
かなり前だが、映画館で、映画の上映中にスマホをいじる人がいて迷惑だと話題になったことがある。
そのとき、聴覚障害のある人が「スマホで字幕ガイド/音声ガイドのアプリを使っているんです」と書いていた。私も知らなかったので、そうなのかと初めて得心した。
(割愛)
人は「自分だったら、決してこういうことはしない」ということを他人がしていると、とても腹が立つ。
そのとき、「相手には特別な事情があるかも」ということに、なかなか思いがいたらない。
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『頭木弘樹 - 口の立つやつが勝つってことでいいのか』
「人間は本能的に、『幸せ』に対して恐怖を感じるのだそうですよ」
「へえー!」と私はびっくりする。
「それはなんでなんですか?」
「『幸せ』を失うのが怖いから、苦痛だからです。Rさんが素敵なレストランやディズニーランドで恐れているのは、そこにある『幸せ』を実感することなのではないでしょうか」p74
『土門 蘭 - 死ぬまで生きる日記』
セルフコンパッションのマントラ。
ネガティブな感情と向き合うときに効果的である。 自分について気に入らないことがあったとき 人生で何かが間違ったと思ったとき, 私は次のフレーズを静かに繰り返す。
「今は苦しみのときである。苦しみは人生の一部である。今、自分に優しくしてもいいだろうか。必要とされる慈悲の心を自分に向けてもいいだろうか。」P120
『クリスティン ネフ - セルフコンパッション』読了。自己批判ではなく、また別のやり方で自分を良くしたい人にとっては、視界を開く示唆深さがあるかもしれない。自分にとっては、超名著だった。
心がネガティブな思考にはまると、壊れたレコードプレイヤーのように何度も同じ思考を反復することになる。このプロセスは「反すう」 (牛が食い戻しを噛むことを表すときに使われるのと同じ言葉) と呼ばれ、うつ状態と不安の両方の原因となる。これは再発を起こし, 煩わしく、制御不可能な思考の形式を伴う。P112
ネガティブな思考に対する反すうが安全を確保したいという感情に起因していることを忘れてはならない。 P113 『クリスティーン・ネフ - セルフ・コンパッション』
音楽放送アプリ「stationhead」で、アメリカ在住の黒人女性から教えてもらった。その人はTim HeckerやNINを流されていて、なかなか印象深かった。
たまたま見かけたInstagramのリールで、インタビュアーが青葉市子さんに「よく聴く作品は?」という質問をして、回答にこのアルバムを挙げられていた。
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10年前ぐらいに作った自分のmixに、これを入れた記憶がある。その際に「ジャズ・ラップとエレクトロニカをどうやって混ぜようか」と考えていた記憶がある。
自分が苦しい時間の中にいることを理解するために少し落ち着き, 心が優しく思いやりのある対応を必要としていることに気づかなければならない。 そうでなければ、 私たちの痛みは放置された状況になり、ストレスと悩みを伴った感情は増加することになる。心のリフレッシュを図ることなく外的な問題を解決することにエネルギーを費やしているため、私たちは燃え尽きたり、疲れたり、圧倒されるリスクを負うのである。P86
読書、いつもは異なる本を並行して読んでいるけど、この本は今の自分にとって、とてもとても重要なので他の本はおやすみして全集中をこの本に向けている。
『クリスティーン・ネフ - セルフ・コンパッション』
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他者の悪い点にばかり意識を注いだ場合、私たちのものの見方は否定的な暗雲によって覆われることになる。 私たちの思考は悪意に満ちたものとなり、精神世界もそのようになるのである。下方への社会的比較は私たちを助けることなく、むしろ、 実際的な危害を加えることになる。 P30
『クリスティーン・ネフ - セルフ・コンパッション』より。これは、悪い側に偏る能力主義に繋がる話か...
懐かしい・・・。
情報が溢れている社会だなんて言うけれど、溢れているのはマジョリティ向けの情報だけだ。
マイノリティ向けの情報は、相変わらず、偏在し、限られたところでのみ流通している。
そんななかで、マイノリティがよりよい暮らしをしようと思ったら、他の当事者と「つながる」 しかないのだ。現状、そういうことが起こっている。P71
『雁屋 優 - マイノリティの「つながらない権利」: ひとりでも生存できる社会のために』 より。
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・寝だめはできない
「睡眠圧」(睡眠科学では、睡眠が不足したときに、眠らせようと抗う力と表すことがある)
「睡眠圧」は、起きている間に積み上がり、眠ることで解消される。借金が溜まり、返済しているのだが、不便なことに、貯蓄ができない。
前もってたくさん眠った(寝だめをした)として、それ以前に溜まっていた借金はゼロになるかもしれないが、たくさん眠ったことで何かがチャージされるわけではない。いくら寝だめをしても、その後に起きることで、また借金が積み上がるのだ。
貯蓄が許されず、起きている代償として借金を背負わされ、眠って返済する。p54
『金谷 啓之 - 睡眠の起源』より
つらい夜、その夜を過ごしたあとでは名前を変えなければならないほどつらい夜がある。そのとき、人はもう同じ人間ではないからでもある。
『E.M.シオラン - カイエ: 1957-1972』 より
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マイクロアグレッションを含んだ発言を指摘するよりも、相手との関わりを減らしたり聞き流したりして、相手に伝えることを諦める方が楽。私自身も含め、マイノリティがそう判断するシーンは少なくない。
そのような現状を踏まえると、私がマイクロアグレッションを含んだ発言について指摘してもらえたのは、本当に幸運でしかない。
説明すれば理解する人間で、なおかつその人にとって説明のコストをかけるに値する相手だと判断されたから、指摘してもらえたのだ。本来、他人のマイクロアグレッションを指摘するのは、ひどく疲れるのだ。P38
『雁屋 優 - マイノリティの「つながらない権利」』より。
二月度読んだ本
・宇野 常寛 - 庭の話(講談社)
・あさの あつこ - あなただけの物語のために どうすれば自分を信頼できる? (筑摩書房)
・高井 ゆと里 / 周司 あきら - トランスジェンダーQ&A 素朴な疑問が浮かんだら(青弓社)
・アーロン・アフーヴィア - 人はなぜ物を愛するのか 「お気に入り」を生み出す心の仕組み(白揚社)
神経科学者サポルスキーは、生涯愛し続けることになる音楽を初めて耳にするのは、たいてい二〇歳になる前であることに気づいた。さらに、新しいスタイルの音楽を初めて聴いたときの年齢が三五歳以上だと、それを好きにならない確率が九五パーセントを超える(「こんなのは音楽ではなく、ただの騒音だ!」)。
この発見は、音楽ストリーミングサイトの〈ディーザー>による研究で立証された。新しい音楽を発見する年齢のピークは二四歳で、ほとんどの人は三〇歳あたりで新しい音楽を発見しなくなることが判明したのだ。P190
『アーロン・アフーヴィア - 人はなぜ物を愛するのか』 より。興味深い研究。
自分のことをどれぐらい知っているかは、相手との差異を理解するときにも、精神を壊さないためにも、仕事の円滑な遂行のためにも本当に大切なことなんだけど、この感覚なかなか共有されにくいんだよな。
これは自分が死ぬまで付き合っていく課題だと思うんだけど、若いときにそんな話をしてくれる大人とは出会えなかったのが残念だった。(本の中には、いたのが救い)