荷物を整理し終えると、徐に夜の海岸へ足が向いた。思えば今年になってはじめての砂浜だ。そんな事を考えるのも束の間、急に寂しい気持ちが湧き上がる。土地には何重にも色々な人との記憶が散りばめられている。それに気づいたからかもしれない。
朝自転車に乗って一緒にパンを買いに行ったこと、コーヒーを買って海辺で座って飲んだこと、夕日を桟橋から眺めたこと、休日の砂浜陶器拾い。
しかしいまここには私しかいない。ふと「ばらの花」の歌詞が脳裏に浮かぶ。「暗がりを走る 君が見てるから でもいない 君も僕も」隣にはいないし、その頃の自分もいない。それでも歩き続けて、私は新しい記憶をここでつくるのだと思った