Yesの大作「Close To The Edge」は、四つの楽章で構成されています。起承転結を綴る各楽章は、独立した曲として聴いても聴きごたえがあります。
「承」にあたる「Total Mass Retain」の演奏時間は2分半ほどです(シングル用の編集では3分超)。第一楽章の「The Solid Time Of Change」の旋律を踏襲しながら、切れ味の鋭い演奏を披露します。ポップさもある音で、プログレの暗いイメージから離れた明るさを感じます。
美しい音の構造、音の輪郭がよく見えるアレンジです。複雑な模様のドローイングに長けた人がシンプルな円を描く――そんなイメージが浮かびます。
Yesといえば、「Owner Of A Lonely Heart」の邦題「ロンリー・ハート」を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
プログレ時代とは異なる、きらびやかなサウンドを特徴づけたのがFairlight CMIです。オーケストラの音をサンプリングして鳴らす「オーケストラ・ヒット」がよく知られています。
この曲について小室哲哉は「テクノロジーの進歩を多用して、びっくりすることをしたら1位に突然躍り出ちゃうってことがあったんですよね。そしてそれは、バンドの代表作になってるという。本人たちの意向は分からないですけど、そういうことが起こるのは面白い」と語りました。
Yesの「Close To The Edge」は、きれいな起承転結を描く4つのパートで構成された組曲です。僕が最も好きなYesソングです。
開幕を告げる「The Solid Time Of Change」と次の「Total Mass Retain」では、ギターとベースを軸とした緻密な演奏が聴けます。その空気をバラード調の「I Get Up I Get Down」が変えます。
パイプオルガンの荘厳な音が頂点に達するとミニモーグの音に切り換わり、やがてバンドの演奏が飛び出して「Seasons Of Man」が始まります。ダイナミックな演奏のなか、存在感あふれるハモンドの音が強く印象に残ります。