shiba710
柴那典
(しば・とものり) a.k.a シバナテン。音楽ジャーナリスト/執筆/編集。1976年生。著書に『初音ミクはなぜ世界を変えたのか』『ヒットの崩壊』。共著『渋谷音楽図鑑』。
ブンブンサテライツの中野雅之とTHE NOVEMBERSの小林裕介によるTHE SPELLBOUNDの5ヶ月連続配信の2曲目。実質的にはこの曲ができたことでバンドごスタートしたのだとか。この二人が組んだら間違いないもの届くだろうなと思ってたけど正直期待以上。小手先のことが何一つない、魂のこもったエレクトロニックミュージック。
Kitriは姉妹2人組のピアノ連弾ユニットで、この曲はアルバム『kitri II』からの一曲。アルバム自体めちゃよいのだけど、この曲のハーモニーと言葉が沁みる。
「ぼくらは時々恋人になって くるったように踊りを踊り続けて ぶっこわれた笑い方を楽しみ そうして言葉を全部失った夜に沈もう」。
調べてみたら、たまの97年の曲のカバーだった。全然知らなかったが名曲じゃないか…。ギターは羊毛とおはな。
シンガーソングライターmekakusheの初アルバム「光みたいにすすみたい」の一曲。声と言葉にすごく切実な響きがあって、ピアノを主体にしながら電子音がひかえめに重なって、バンドが後半で入ってくるアレンジもいい。インタビューによると、飛び降り自殺をテーマにした曲だとか。「箱庭世界」みたいにKanamaruリミックスも聴きたい。
大阪出身のラッパー、1stアルバムからの表題曲。kZmや、sic(boy)や、いわゆるオルタナティブロックを経由したラップミュージックを鳴らす人がどんどん出てきているここ数年のシーンで、なんだか気になってしまうのが彼。タイトルが象徴するようにXXXTENTACION以降の「ベッドルームロックスター」という感じ。
リリカルレモネードの記事で知ったんだけど、underscoresのデビューアルバム『fishmonger』がめちゃめちゃいい。00年代のエモやガレージロックを(邦ロック様式をアニメ主題歌経由で吸収しつつ)最新型のhyperpopにしてる感じ。カリフォルニア在住らしいが素性は謎…。
Tempalay化けたなーと思う。新作『ゴーストアルバム』、彼らにしかできないタイプのサイケ・ファンクで、いろんな文脈入りつつ不思議なオリエンタル感があって、かつ定型からの逸脱とポップな聴き応えが同居してる。「シンゴ」は楳図かずおの『わたしは真悟』をモチーフにしていて、アルバムの曲は他にも引用元が沢山あって、それが全く新たな発想で化けてる。オリジナリティってこういうことだよなと。
歌詞すごい。
「神様が匙投げた 華やかなふりをした世界で 去る者と縋る者と ここでそれを嗤っている者」
「神様が匙投げた 明らかに薹の立った世界で 狩る者と狩られる者と ここでそれを嗤っている者」
この言葉をこのメロディに乗せて歌う気概あるのGRAPEVINEならではという感じ。「すべてのありふれた光」に対してのアンサーソングというか、あの曲の「君」がこの曲の「私」なのかなとも思う。
iriやawesome city clubのプロデュースをしたり、chelmicoの「爽健美茶ラップ」を作ったり、いろんな形で活躍してきたESMI MORIのシンガーソングライターとしてのデビューアルバムからの一曲。まず重量感あるベースの鳴らし方がよくて、後半のデジタルクワイア含めてサウンドメイキング格好いい。かつ歌としての真っ直ぐ刺さる感じもいい。
スカパラと長谷川白紙のコラボ。明らかにドラムのワン・ツー・スリーのカウントから入り得ない冒頭のビートと双方の名乗りがまず最高。冒頭はスカパラっぽさ残ってるけど中盤から完全に長谷川白紙の世界、総じてこの二組じゃないと成し得ないコラボになっていて、かつ歌詞もグッとくる。おそらくスカパラ側から声をかけたと思うんだけど誰発案だろう?とにかくよい。
オンタリオを拠点にレーベル「Helix Tears」主宰のblackwinterwellsと、そこに所属する8485のコラボEPから。サッドで辺境的なエレクトロ・サウンドがすごい好み。A.G.COOKと「PC MUSIC」みたいに重要なレーベルになりそうな気がする。
土岐麻子のカバーアルバムはASIAN KUNG-FU GENERATION「ソラニン」の解釈が抜群。くるり「Jubilee」、スピッツ「楓」、indigo la end「夏夜のマジック」と、選曲もいいしアレンジも巧み。カバーアルバムというのは音楽家としての”批評”だよなあと思い知らされる。