Johnny_Yuk

Depeche Mode Clean for Johnny_Yuk

バックで流れるサウンドに重厚感があり、滔々と読み上げるようなボーカルも、それまでの叙情性をほとんど残していません。"Clean"という語をキーワードとして展開される歌詞は徹底して自省的である一方、未来への大きな眼差しを秘めたものであり、アルバムの終わりとして非常に美しい最後を飾っていると思います。全体を通して暗いこのアルバムですが、この曲を聞くときには、他方で何か確かな力のようなものが感じられる気がします。

Depeche Mode Blue Dress for Johnny_Yuk

この曲も、テクノ本来の実験性を意識したような曲になっているように聞こえます。ただしアルバムの最後から二曲目ということもあり、それまでと比べてややメロディックな伴奏で締めようとしている感じもあります。おそらく関係は薄いと思いますが、繰り返される三音のメロディはどこかMy Bloody Valentineを思い出させます。また曲が終わった後のコーラス部はさらにメロディックさが強くなり、ひとつのアルバムが終わっていく壮大ささえ感じさせます。

Depeche Mode Policy of Truth for Johnny_Yuk

アルバム"Violator"ではこの前が”Enjoy the Silence"であり、一つの節目を過ぎてややそれまでとは変わった曲になります。イントロの時点から、実験的というか、それまでのメロディ偏重でともすればポップだった曲達と比べ、奇妙な印象を与えるリフが特徴的な、いってしまえばよりニューウェーブらしい曲になっています。ただしボーカルの魅力には変わらない部分もあり、個人的にはリフが好みなのもあってかなり好きな曲です。他と比べても乾いた音にちょっとしたCabaret Voltaireのようなポストパンクさ、インダストリアルっぽさがあるのもいいと思います。

Depeche Mode Enjoy the Silence for Johnny_Yuk

アルバムで聞くと、前の"Waiting for the Night"で抑えられていたものがここにきて解放されるようにして、すぐさま始まるのが特徴的です。リフも、簡単なメロディでありながら曲の無機質さと音の心地よさを両立しているように思います。"Words are very unnecessary / They can only do harm"と歌った後にこのリフを流し、ボーカルのない"Silence"を聴かせる演出も効果的に働いているのではないでしょうか。

Depeche Mode Waiting for the Night for Johnny_Yuk

イントロからアンビエントらしさが強い曲で、尺も6分前後と長めです。アルバムでは前の曲"Halo"からさらに暗く静かになった曲調は、一見起伏がないようでも音は細かく移り変わり、やはり流石というべきこだわりがむしろ感じ取りやすくなっているようです。この曲は次曲"Enjoy the Silence"にもかかってくるような感じが強く、"Waiting for the Night "というタイトル、"all that you feel is tranquility"という歌詞も、そう考えると示唆的です。彼らの構成力とクレーバーさが見えます。

Depeche Mode Halo for Johnny_Yuk

メロディがとても好きな曲です。バックのサウンドは良くも悪くもDepeche Modeという感じですが、ボーカルのやや抑えた陰鬱ともいえる声色と、無機質でありながら叙情性に富んだ旋律は、むしろ単なるエレクトリックさよりもずっとこのバンドの魅力の本質に近いようにも思えます。歌詞も、詩的に様々なモチーフを用いつつコンパクトに展開され、それがこの曲を一方では嫌味のないすっきりしたものにしています。

Depeche Mode Personal Jesus for Johnny_Yuk

アルバムではこの曲でやや毛色が変わって、跳ねるようなリズムが特徴的な、ダンスミュージックっぽさがより強調されます。バンドの代表曲のひとつというくらい有名な曲で、やはりメロディセンスもリズムの取り方も洗練されていてかっこいいです。また、"You own personal Jesus"、「自分だけのイエス」という歌詞も、キリスト教世界の絶妙なニュアンスがうかがえて好きです。もちろんラブソングとしての側面もありますが、そこからさらに一歩踏み込んでいるような姿勢が見えます。

Depeche Mode Sweetest Perfection for Johnny_Yuk


ダークでありつつもやはりどこかエキゾチック、というのは個人的なDepeche Modeのイメージでもありますが、この曲はそれが特に強く、シリアスなボーカルの旋律とバックで流れる音はそれぞれを引き立てあい、ひりつくような感じを演出しています。後半からパーカッションが入るとやはりそれらしくなりますが、前半部はかなり掴みづらいような独特の雰囲気を持っているように聞こえます。"sweetest perfection"と、"perfection"の部分で韻を踏んだテーマがやはり繰り返されますが、それが口ずさみたくなるようなキャッチーさも兼ね備えています。

Depeche Mode World In My Eyes for Johnny_Yuk

Depeche Modeでも特に名盤とされているViolatorですが、やはり一曲目からテクノを楽しんでいる感じが伝わるというか、あたかも音を使って好き勝手に遊んでいるかのような雰囲気はバンド全体を一貫しています。また、個人的には、このややエキゾチックな旋律もDepeche Modeの特徴の一つだと思います。テクノ寄りのニューウェイブということもあり繰り返しが軸になりますが、繰り返されることにより旋律の意味合いが重層になっていくような感じがあります。

the pillows Please Mr.Lostman for Johnny_Yuk

表題曲であるこの曲は、アルバム全体の締めとして、これまでの諦観や悲哀をまとめて煮詰めたようでありながら、一方で前へと進む力強さも兼ね備えています。「歳を取って忘れられてく 痩せた枯れ木に」「星が咲いていた」という歌詞がとても好きで、「Please Mr. Lostman」という、ビートルズなどがカバーする有名な楽曲をもじったサビの呼びかけには、彼らの中に眠るロックという音楽そのものへ訴えかけるような迫力があります。消え入るような曲の終わりに、一つのコンセプトを持ったアルバムが終了する美しさを聞き取ることが出来ます。個人的には、ピロウズでも一二を争う好きな曲です。

the pillows GIRLS DON'T CRY for Johnny_Yuk

このアルバムでは一見浮いているような曲です。元ネタはキュアーの”Boys Don't Cry"でしょうか、とにかく、アルバムの中ではややクリーンめなギターリフが特徴的な曲で、歌詞を見てもコンセプトありの曲のように思えます。ここで歌われる「悪名高き彼女」は、やはり気丈ですがどこか儚げで、その実何を考えているかは、こちらから全く未知な女性として描かれています。彼女に「惹かれている」にもかかわらず、「キスしてぎゅっと抱きしめたい」と願うだけにとどまる主人公の感情からは、ピロウズらしさとこのアルバムらしさの両方を見とることが出来ます。

the pillows SUICIDE DIVING for Johnny_Yuk

「飛び降り自殺」というあまりにといえばあまりにストレートなタイトルですが、歌詞を見るとその内実は全く単純でないことがはっきりわかります。「自殺」は、この曲では「飛躍」や「転身」といった意味を持っているようにも読め、「鏡」の物象を通した自己同一性の問題にも深く切り込んでいることから、これもまたバンドの覚悟を示す曲であると考えてもよいのではないかと思います。周りから排斥され、それでも進まねばならない悲しみはこのアルバムのひとつのテーマだと思いますが、それが「自殺」というトピックによって綺麗に表現されています。

the pillows Swanky Street for Johnny_Yuk

「誰の記憶にも残らないほど 鮮やかに消えてしまうのも 悪くない」という、かなり諦観の滲んだ歌詞からスタートするこの曲は、アルバムに収録された他の曲と比べてもかなりネガティブな側面が強いように思います。「壊れてもいいんだ」と、あたかも自暴自棄になったかのような向こう見ずな勢いがある一方で、非常に暗く深い自省の側面があるのが特徴的です。個人的にはギターの音色が気に入っていて、ソロやフレーズも曲に合っていて好きです。

the pillows ストレンジ カメレオン for Johnny_Yuk

アルバムで最も中心的な曲をあえて決めるとすればこの曲になるのではないでしょうか、少なくとも、ピロウズによる曲の中でもかなり象徴的な曲であるのは確かです。「優しい歌を唄いたい」「出来損ないのカメレオン」といった歌詞の中には、さわおさんの自意識とともに、バンド自体の覚悟もはっきりと現れています。「キミと出会えて良かったな」と歌い、そのまま消えてしまうような曲の展開には、「音楽界への遺書」であると説明されたアルバムそのものの意識が悲しげに反映されています。とても好きな曲です。

the pillows 彼女は今日, for Johnny_Yuk

あまりヒロインの影が濃くないこのアルバムで、この曲は目立っているように思います。「どこかで見覚えのある 外国製の 人形に似た瞳が 素敵さ」とやや芝居がかった歌詞から「彼女」への想いを歌うこの曲には、しかし「She is perfect」などに究極の形で現れるような、なにか具象化できない観念のようなものへの希求を女性への憧れに重ねて表現するようなところがあります。タイトルの「彼女は今日,」という言葉で曲が終わる点にも、曖昧でそれこそ「幻」じみた「彼女」の特殊さが見えるような気がします。

the pillows ICE PICK for Johnny_Yuk

個人的にはかなり気に入っている曲です。曲全体を覆う諦観と悲痛な覚悟は、「二度と本当の顔は 誰にも見せたりしないぜ」「いつも 今より似合う場所が どこかにあるような気がしてる」といった歌詞に鮮烈に現れています。この曲を聞くとなんとなく懐かしいような気分になって、寂しげなギターが優しい旋律によく映えます。

the pillows Moon is mine for Johnny_Yuk

これまでの二曲からはやや変わって、やや落ち着いた曲調が特徴になります。ここから「彼女は今日,」まで段々と静かなテンションへと移り変わっていき、「ストレンジ カメレオン」で再び盛り上がる、というのがこのアルバムの流れになっています。このアルバムで初めて明確なヒロイン像が登場する曲であり、「二人の時を増やせるなら 僕はドラキュラに噛まれたっていいぜ」と歌う声には、このアルバムを通貫する皮肉っぽい悲願の感じがあります。

the pillows TRIP DANCER for Johnny_Yuk

このバンドの中でも私が特に気に入っている曲の一つです。歌詞は、「僕の振り回す手が 空に届いて あの星を盗み出せたら 何か変わるのか」、と無力感を吐き出しているようですが、一方では「探してるものは僕らの中ではしゃいでる」と歌い、確かな衝動を持っている彼ら自身を、嘘偽りなく表現しているように思えます。ピロウズの特徴である、非常に良質なツインギターの音色も特徴の一つです。

the pillows STALKER for Johnny_Yuk

「僕は汚れたストーカー」と歌い、アルバムの一曲目を飾る曲。ダークな世界観とノイジーでありつつもどこか幻想的な曲調はこのアルバムらしく、導入として完璧です。曲単体としてみても、効果のついたボーカルと歪んだギターが全面に押し出されつつ、力強いベースとドラムがその土台を作る、それまでのピロウズとは違ったロック的なかっこよさがはっきりと現れているように思います。