日本のジャケット・デザインが海外作品の模倣時代を経て独創性を確立し、やがて世界のクリエイティブを追い抜いてしまうのは90年代後半〜00年代。渋谷系はその起点だ。
音楽的特徴だけでなく、アートワークやファッションまで含めて渋谷系と呼ぶが、それは信藤三雄らがデザインによって“渋谷系をヴィジュアル化した”ともいえる。非主流派による文化運動としての渋谷系に対し、木村豊は「主流派でもなく、かといって非主流派でもない、ポスト渋谷系のデザインとは何か」と考え、そして名作と呼ばれるデザインが作られていく。メジャーでもサブカルでもないものを志向した先に名作があった、というのは創造的で示唆に富んだ話だ。