ついに日本盤CDが出た!
2023年を締め括れない気分でいたのは、"As Palavras"(言葉たち)と題された本作を解説、対訳とにらめっこしながら聴きたかったからです。
百花繚乱的な傑作ですが、派手さよりも要所々々での穏やかな名曲群に舌鼓(耳鼓?)を打ちます。本作は、愛と優美と官能と思弁と悲哀といった言葉たちに彩られていて、より楽曲が孕む空気が立ち昇ってくる感じです。
初めのこの曲「砂の粒」は、愛する人と世界が直結する具合がまさにブラジルっぽい。
君が見える
君を感じる
君の匂いを感じる
砂の粒にさえ君を見る
そして世界が君の顔を至る所に写し出す
自分の国の音楽をこんなに深くまで学術的に美術史的に系譜たてて体系化させることで音楽にするアーティストは希少価値だ。例えば、ここまで学術的なアプローチができていた日本のポップアーティストとなると坂本龍一や筒美京平、大滝詠一ぐらいしか思いつかない。
ブラジルではもちろん、稀代の天才カエターノ・ヴェローゾだ。フーベルの様々な音楽を取り入れる貪欲さと研究心。そして、それをポップスに昇華させる才能。やはり現在ミナスは才能の宝庫である。
アナ・カエターノ、ト・ブランヂリオーニとの共作曲「Grão de Areia 」から、フーベルの論文はスタートする。