聖地

切通しを抜けて細い道を進むと、石柱が二本建っている。横棒の無い鳥居みたいに。門の向こうには小さな原っぱ。ただそれだけ。草を分けてまん中まで進んでも何もない。
再び門をくぐって帰ろうとすると石柱にサンスクリット語でこう書いてあった。
「ここよりいでて泣け」と。

一歩踏み出すと涙が止まらなかった。
門の外に20歳の自分のリアルがあった。
旅はここで終わったんだと思った。

バックパッカーだった先輩からインドでのこの話を聴いた時はよくわからなかった。ただの飲んだくれ学生だったから。
その先輩が亡くなって3年。時折思いだす。

「先輩、今更ですみません。なまらいい話じゃないですか。」


