少しずつワールドスタンダードの作品を聴く。まとめて聴くのがとても勿体ない。08年の作品という情報が全く意味をなさない、昔からどこかにあったような音楽。
1つの音の響きから始まり、それが連なったり他の音と重なったりすると、何倍も豊かになる。そんな当たり前のところから音楽の魅力を伝えてくれる。音が空間を震わせて自分の耳に届くというのは、これ以上ない素敵なことのように思えてくる。
ここまで美しいと彼岸の音楽に聴こえてきても不思議ではないが、この音楽は街角の開いた窓からふと聴こえるさりげなさを獲得しているのが奇跡的ですらある。
聴いたら最高なんだろうな、と確信しつつ聴いてないものはそれなりにあり、ワールドスタンダードもその1つ。それで本作(10年作)を聴いてみたら予想以上に最高だった。
アルゼンチンのネオフォルクローレの影響下にあるとのことで、そちらも大好物なのだが、その消化具合が絶妙。何というか日本の湿度に寄り添った音になっているような。上手く言えないけど。
あと、ジャケットから想起された点だが、時代も場所も超越した普遍的な人間の営みのような風景に接続されている音だと感じる。鳴った瞬間から「詠み人知らず」ともいえる音楽。
ワールドスタンダードという名前が全く大言壮語になっていない大変贅沢な音楽です。全部聴きます。
青森の秋はとても短い。祭りが終わって、カサリと葉が音を立てたらやってくる。そしてあっという間に雪がそれらを覆ってしまう。
その短い期間の枯葉道を歩く時でさえ、頭の中は冬の辛さを想像することでいっぱいだったりする。
この曲を聴く時、薄められた秋の風が耳を掠める。