
aoba_joe
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The Pop Groupの80年作。
有名なのに長年CDすら入手困難だった作品で、10年ほど前の再発は嬉しかったです。今聴くと前作の方が面白く聴こえますが、音響を取っ払った本作の激情も凄まじいです。
終始ブチ切れまくっており、アナーキーかつファンキーな演奏も熱いです。この曲なんかは彼らのバチバチなテンションが見事に真空パックされていて素晴らしいです。
踊らせる気が一切ないのか、あるいは各々勝手に踊らせようとしているのか、どっちにせよ聴き手への作用の仕方が自由な感じがして、その辺が孤高のカッコよさを纏っています。
それにしても2枚とも神がかった名ジャケです。
The Pop Groupの79年作。最近ダブを聴けておらず。一番最初に触れたダブな音はこれかFishmansだと思います。
ダブが起爆装置としても抑制装置としても機能していて、テンションの振り幅が寒気がするくらいに大きい。ボーカルの叫びが増幅されるだけでなく、どれだけ増幅されても発散し切れない感情の行き場のなさが、生々しさを超えた切迫感を捉えていると思います。
"我ら、時"って凄いタイトル。吐き出される言葉は詩的かつ直感的。"今この瞬間に己の意志を為せ"といった姿勢を突き抜けると、"We Are Time"に至る気がします。音の瞬発力があるからこそ、この三語も意味を超えて刺さります。
Soshi Takedaによるリミックス。BowAsWellというアーティストは知りませんでしたが、原曲もクールに踊れる洗練された音です。
Soshi Takedaは近年のアンビエント作家の中で、清涼感という点において頭抜けた素晴らしい音を聴かせてくれます。このリミックスでも同様で、追加されたパーカッションやシンセソロが軽やかで溶けます。Bowさんの声との相性も良いです。
で、音を聴くとますますジャケットがクールに見えてくる相乗効果あり。このジャケは、今のところ今年の上位に入ってくるぐらい好きです。
King Crimson"太陽と戦慄"のセッション音源を元にMixしたElemental Mix。23年に出ていたことを知りませんでした。
"Red"の同Mixと比べると、遊び心控えめで少し寂しいですが、"The Talking Drum"ではやけに風が吹いていますし、この曲ではJamie Muirの金物パーカッションが目立っていたりします。
この曲のラストが最大の改変箇所。フィニッシュの轟音の中で、Jamieのピュアな鐘の音が鳴って北航平を彷彿とさせた後、ドローンなバイオリンの音がやたら長く続き、最後にトラウマ的なキーキー音が鳴って終了。予想外過ぎてそれまでの印象が全て吹っ飛びました。
Genevieve Artadiがビックバンドとコラボした新作。
拍手が入ってるのでライブ音源のようです。一昨年のソロ作がとても素晴らしく、本作でもこの曲含め多数演奏されています。
彼女の特徴的な着地しないメロディラインを、ホーンセクションがユニゾンするのを聴いていると、器楽的なメロディを本人が歌うことで独特の浮遊感が出ているのだと気付きます。
自身の内面的なイメージが爆発しているスタジオ作品と比べ、訳の分からなさは減っているものの、全体的にかなり躍動感に満ちていて楽しいです。
Yo La Tengoの06年作。
久々にタワレコに行ったらLPが置いてたので迷わず購入。彼らの作品はやっぱLPで1面ずつまったり聴くのが良いです。
お馴染みのギターが炸裂する曲も勿論最高ですが、そうじゃない小品群が異色のポップソングばかりで素敵です。ピアノや弦楽器が甘美な印象さえ与えます。でも軽やかな演奏とボーカルがあれば、何でもヨラテン印に仕上がるのが素晴らしいです。
まったりスウィングしながら、半分夢の中な歌声が彷徨うようにメロディを歌うこの曲が特に印象的です。緩いのに謎の気品が漂っています。
電球の2枚同時リリースEPのもう1枚"分解"です。
先ほど投稿した"集合"とは正反対に、本作ではこれでもかと耳障りなギターが鳴っていて、しかも色んな耳障り具合なので、痛快を超えて少々怖いです。
UTAUの音声ライブラリ"朱音イナリ"が"今夜旅に出た あの人の街へ"と繰り返す冒頭のこの曲は、展開もなく轟音が垂れ流され、イナリの声は天上の山彦のように轟音と混じらずに虚しく響きます。
とにかく出している音が凄い、という1点において衝撃的な作品。ありがたや。
電球というバンドの新作EPが2枚同時リリース。
昨年のデビュー作も凄かったですが、ますます自在に化けてます。
本作"集合"では、彼らの持ち味の爆音ギターをほぼ封印し、何とも言えない湿度を孕んだ茫洋としたサウンドスケープが全面的に展開されています。
この表題曲は10分超延々とこんな具合で、途方もなく気持ちいいんですが、このジャケに潜む違和感のように、ふと我に帰る不穏さが隠れている気がします。
前作ではシューゲイザー的な見方もあったかと思いますが、本作を踏まえると岡田拓郎的な存在なのかもしれない。
The Mars Voltaの新作。まさかコンスタントにリリースしてくれるとは思わず、嬉しいです。
前作はラテン歌謡味があった歌志向の作品でした。今回は18曲をシームレスに繋げてるあたりに、かつてのプログレっぷりが窺えますが、歌メインなのは前作踏襲といった感じです。
全体像は未だに掴めませんが、1曲ごと楽しめるバラエティがありつつ、自然に繋いでいく構成は見事です。全体的に音が少ない中で、ドラムの緩急によりダレることがない感じが良いです。あと、やっぱCedricの歌が素敵です。
印象的なのは、彼ら史上最も美しい冒頭の"Fin"と、抑制的ながら往年の熱を帯びる終盤のこの曲。
渋く進化中です。
Sandro Perriの18年作。
各面1曲という大作。電子音が生音と心地良く溶け合ったミニマルな歌ものです。
A面のこの曲は、反復に耐えうる物悲しい歌メロの美しさが素晴らしいのはもちろんのこと、全てのパートがゆるやかに連環を成して歌っているので、色んな音に耳を傾けているうちに24分があっという間に過ぎ去ってしまいます。
前作のエキゾですらあった色彩から解脱して、寂寞とした時の流れを音で表現したかのようですが、そんな中でも歌声とギターに宿るブルースが生身の人間味をじわりと感じさせて沁みます。これも1つのエモさです。
Seefeelの93年作。今年再発されたのですが、そもそも聴いてませんでした。
エレクトロニカ、アンビエント、シューゲイザー、ダブといった要素があまりにいい塩梅で混じり合った作品。個人的には、ベースがメロディアスで上モノが音響に徹してるのが好きです。たまに入る女性ボーカルも幻想的で良いです。
93年でこれはかなり先駆的だと思いつつ、トリップホップと同時代と言われれば、ミクスチャー具合は似ているかもしれません。
ボーナストラックのremix集もやばそうなのでちゃんと聴きます。
北航平の新作はガラスが主役の作品。ガラス作家が彼のために作成したガラス作品を使用しているとのことです。
ガラスの透き通った音が心地良いので、最低限の楽器の音が加われば、それだけで耳に馴染む音楽になるということが分かります。ガラスの音に耳を傾け続けると、自分が空っぽになって自分の内側でガラスの音が鳴っているような錯覚にすら陥りそうです。
この曲は風鈴的なガラスの使い方なので、最も落ち着く音になっています。ボーっと聴けますが、よく聴くとスペイシーだったりします。
さよポニ行脚はベスト盤(19年作)で締めます。
ソングライター別のディスク構成、アルバム未収録の名曲もしっかり網羅する選曲もバッチリです。
アルバム未収録曲から選ぶとすれば、やはり1番の代表曲であるこれです。アニメ"キルラキル"のED。
"心血を注ぐ"という表現が似つかわしいほどに、全ての面においてさよポニ史上断トツで気合が入っていて、それに相応しい名曲になっているのが最早泣けます。
ふと思いますが、今彼らと同じコンセプトで出てもありふれていると思われるかAIと疑われそう。出てきたタイミングも良かったんだと思うし、出会えて心底良かったと思います。
さよポニ行脚中。24年作の10枚目。ついに最新作まで来ました。
さよポニのニュースタンダードな作品。前作の洗練された音を、よりポップかつさよポニ的正統派として鳴らしていて、ジャケの通りの曇りなさが爽快です。少なくとも20年代の4作品の中では最高傑作です。
ふっくんの存在感が大きく、"銀河鉄道の夜"を彷彿とさせる"星の旅路"と、これぞさよポニなキラキラで切ない疾走感を伴うこの曲が本作の中核です。いずれも別離をテーマとしている点も"さよならポニーテール"の名にふさわしいと言えるかも。
自主リリースとなり、CDがすぐ売り切れて買えずじまい。LPは買います。でも本当は店頭で並んでてほしい作品です。
Oren Ambarchiの19年作。
ジャケは水平線かと思ったらテニスコートでした。この人はアンビエント的なものも作れるだろうと思ってはいましたが、こんな意識が遠のくほど美しい作品だったなんて。
薄れゆく記憶を辿るようにポロポロと演奏されるピアノの美しさ、というか、ピアノが途方もなく美しく聴こえるように設計された他の諸々の音も全て素晴らしいです。
自由なセッション感を残しつつ、鳴らされた音には必然性が宿っているのが恐ろしい。そんな境地にサラッと至ってそうなのが一層恐ろしい。
桜まつりに行ったら、会場で流れていました。実際には殆ど咲いてなかったのですが、みんなまったり予感を楽しんでいたように思います。
個人的には、星野源の曲の中で最も好きな曲の1つです。ブラックミュージックの影響がそのまま音に出ていて、その潔さが良いです。サビもシンプルな繰り返しになっているのも、敢えてやっている感が強いです。
ただし、肉感的な黒い音なのに、歌詞での"僕"は"ただ見ている"だけ、しかし、その見る対象は"胸も足も開いて踊る君"という…"見るだけの僕"を挟んで提示される肉体は、直接的な音と比較してえらく屈折しています。つまり、その奥ゆかしさがエロいということです。最高。
Oren Ambarchiの22年作。これは大傑作なので、皆様に聴いてほしいです。
ミニマルテクノを人力化し、各々のプレイヤーの即興も自然に組み込むという、できそうでできないことを平然とやってます。
4部構成で、エレキギター2本による幾何学的なフレーズが絡む1曲目、ドラムが合流し断片的なイメージが現れては消える2曲目、思索的なピアノが美しい3曲目、12弦ギターが縦横無尽に宇宙を織りなす4曲目、と表情を変えながら静かに疾走し続けています。
清流の如きドラムの永続的グルーヴと、極端に音数と音程を制限することで全体をクールに抑制するベースが最高にかっこいいです。ECMっぽい硬質さも好きです。
Jefre Cantu-Ledesmaという米国アンビエント作家の新作。スピリチュアルでとにかく気持ち良いです。
20分にも及ぶこの曲は、その名のとおりミルキーな海に浸れる至福の時間。さざ波のように漂うピアノとドラムが絶妙なグルーヴを生んでいるので、ただの繰り返しが味わい深いです。
さよポニ行脚番外編。みぃなのソロ2枚目(23年作)。
前作同様、フォークロックがベースですが、音楽性は更に自由に、歌い方も多彩になっていて、単純に女性SSWの作品として面白いです。1曲もさよポニに入りそうにないという意味でも、ソロとしての作風が確立されています。
特に良いのは、ヒップホップ的なビートとざらついたギターの絡みがクールで現実と幻想が混じり合うような詞が印象的なこの曲と、美メロによる秋田犬讃歌でコズミックもふもふフォークに仕上がった"銀ちゃん"の中盤2曲です。
さよポニ諸作の中でも最もアーティスティックな作品と言って良いと思います。
さよポニ行脚中。22年作の9枚目。
タイトル"夜の出来事"の通り、夜をテーマにした曲が多く、カラフルさは少し抑えて全体的にメロウな仕上がり。自然に聴いてましたが、意外と新境地かも。
近作からは、それぞれのソングライターとボーカルの棲み分けがはっきりしている感じがします。個性の確立や適材が進んだ結果ですが、すっきりし過ぎて寂しいと感じる時もあります。5人のコーラスがもう少し聴けると嬉しいです。
1曲挙げるとしたら、トラックメーカーとしての324Pの魅力が久々に味わえるこの曲です。声や音の抜き差しがファンキーながら、いい具合に気の抜けるユーモラスなところが好きです。吐息の活用も効果的。
Moodymannの00年作。途方もなくかっこいいです。
他の作品でもっと洗練されたグルーヴィーなものもありますが、この作品での漆黒のザラついた生々しさは格別です。煽り立てる熱さがあります。
特にこの曲は、オルガンの即興演奏と共に上り詰めていく女性ボーカルが素晴らしく、とにかく永遠に続いて欲しい1曲です。
さよポニ行脚中。21年作の8枚目。
前作でのこじんまりとした感じから一転、再び充実作を出してくれて安心しました。ひとえに各ソングライターが強力な楽曲を持ち寄ったのが大きいです。特にマウマウによるこの"キマイラ"とクロネコの"楽園"はそれぞれの最高傑作と言ってもいいかも。
全体では、本作のメグ曲が個人的に微妙なのと、後半にもう一波欲しかったという点が若干惜しいです。
この曲はさよポニ史上最強のファンクチューンでありながら、あゆみんとしゅかのボーカルが完璧にマッチしており、舌っ足らずな歌とリズムの絶妙なズレすらグルーヴィー。キマイラというゴツい単語をキュートな恋愛に仕立てる歌詞も凄いです。
I Am Robot And Proudの新作。春になったらまた聴こうと思っていたのに、春が来ない…
世界が芽吹き出したかのような慎ましく幸福感に満ちたエレクトロニカです。
緻密に音を配置しているのを感じさせない自然さがとにかく素晴らしいです。メロディもリズムも音の種類も曲ごとに多彩だから耳を傾けるのが楽しいし、かと言って注意を集めることを強制しない風通しの良さがあります。
人肌に馴染むような温かな音色もぴったりです。
平日に休みでも取って日向ぼっこしながら聴きたい。
こういう間口が広く敷居も低い素晴らしい作品が、電子音楽の素敵な入り口になるんじゃないかと思います。
さよポニ行脚番外編。
謎の存在、おはようツインテールの作品(21年作)。ボーカル3人はさよポニとは別人です。
ふっくん詞曲+マウマウのアレンジが冴え渡るシティポップ的な楽曲が多く、爽やかに聴き通せます。この曲はだいぶ突き抜けていて後述のボーカルとの相性良いです。
ボーカルは本家より下手だし個性に欠ける点が微妙だと思ってましたが、それはむしろ個性の消失を目指しているのではと思いました。
ユニゾンで歌うパートが多く、3人の歌声が見事に溶け合って匿名性を獲得しています。その分、かなりマシマシなコーラスが引き立つのが不思議で面白いです。
□□□の"ファンファーレ"が好きな人はハマると思います。
さよポニ行脚番外編。
ボーカルみぃなのソロ作品(20年作)。全編みぃなが作詞作曲な時点でさよポニとは一風変わっていますが、楽曲自体も自由度の高いものが多く新鮮です。
フォーキーなバンドサウンドは意外と振り幅が大きく、みぃなの歌声もかつてなく力強く感じます。意味よりもイメージや語感を優先した詞も歌や演奏と自然に溶け合っているのがいいですね。
この曲のタイトルはRobert Wyattから取ったのでしょうか。大らかな波のようなゆったりとした演奏の上を舞うコーラスの美しさ。グロッケンが入るアレンジもめっちゃ好きです。
さよポニ本体を敬遠する人でもこれが刺さる人もいるはず。
加藤和彦の81年作。
第一次大戦後の"狂乱の20年代"のパリをテーマとした作品。タイトルの"ベル・エキセントリック"とは、往年の社会規範を逸脱した当時の風変わりな美女を指します。
彼と妻の安井かずみによる美学の結実があります。懐古ではなく、20年代当時をリアルタイムとして音と詩で描くという凄まじさ。
参加しているYMOらの当時の関連作と比較すると、音の鳴りへの拘りが半端なく、この曲のギターソロあたりは特に凄いです。
歌詞カードに掲載された海野弘のエッセイを読みながら聴くと解像度爆上がりです。
現代の一般ピープルからすると、銀河系の彼方くらい縁遠く、敷居も高いですが、唯一無二の名盤です。
過激な三寒四温が自律神経を破壊しつつ小難しい音楽の聴取を可能にしている気がします。そんな訳でGuiroを聴いたら実に良かったです。
いい声の歌ものという点を除けば、メロディ、リズム、コーラスおまけに詞も常人の予想を斜め上に裏切ってくるので、何度聴いても飽きない嬉しさと理解に至れない歯痒さが付きまといます。
これはceroでもベースを担当している厚海義朗さんによる曲で、歌とリズムの並走っぷりが不思議と波に揺られるような心地よさをもたらす作品ですが、妙に醒めています。
唯一のフルアルバム"Album"(07年作)は超傑作ですが、SpotifyにないのでBandcampか現物で聴きましょう。
Los Piranasというコロンビアのグループの新作。全く予備知識なく聴きましたが、インディーロックを愛する方々にも刺さる作品ではないでしょうか。
全編インスト。ギター、ベース、ドラムによるスカスカで、所によりズレてるのがポリリズムなのか分からない、ガレージサイケともいえるアンサンブルがユーモラスで楽しい。
ギターのフレーズにカリブ感があるなあと適当に思ってたら、コロンビアは南米最北の国で、辛うじてカリブ海に面していました。
70年代初頭のカルト作品感あるジャケットも良いです。
さよポニ行脚中。20年作の7枚目。
前2作の充実度と比較して、肩の力が抜けた作風というのもあり、正直なところ最も地味な作品です。
自己模倣的な感じもあって、スピンオフ的にゆるく聴くのがいいかと思います。
ということで、この曲なんかをベースにするとアルバムとの波長が合ってくるかもしれない。まったりしてるけどちょっと切ない感じが良いです。
Oren Ambarchiの16年作。
3部構成に分かれており、パート1がミニマルテクノ、パート2のフォーキーなインタールードを挟み、パート3ではミニマルテクノが徐々に人力化し、上モノのみ壮絶なフリー演奏状態に、そして"Stop"という女性の声により突如終了。この展開を全く自然にやるのが恐ろしいです。
パート1の方向性だけでも十分なのに、そうせずにカオスに突入する男気(=ミュージシャンシップ)に惚れます。
これのライブ盤が輪をかけてかっこいいのでぶっ飛べます。
"Hubris"というとRichard BeirachによるECM名盤と同名ですが、傲慢といった意味だそうです。