不穏なシンセサイザーの響きと陰鬱でダウンテンポなビートに導かれてアール・スウェットシャツのデビュー・アルバムの幕をゆっくりと引き上げるのは、アールその人ではない、SK・ラフレアのねちっこいライムだ。
父への愛憎、父の不在による喪失感と渇望感というのは『ドリス』において重要なファクターである。祖母の死について語った"バーガンディ"では、父が詩人であることによって周囲の期待値が高いことへの不安を吐露している。父の不在、父に対する複雑な感情はドモ・ジェネシスとも共通しており、"ナイト(Knight)"において彼は『この成功を見ろよ、俺は父親なんて必要ないって事実がわかったんだ』とラップしている。