自制に先立つ「努力してみよう」「少しはましに生きてみよう」という意欲がもてることですら、恵まれた家庭や社会環境のおかげだったりする。それに、どういう資質をもって生まれついたかもまた、自分ではどうにもならない偶然の要素として、自制の能力の獲得や発達に影響するだろう。
したがって、自制がうまくいかないのを丸ごと本人のせいにして非難するのは、ものごとを正しく捉えたうえでの行為とはいいがたい。
にもかかわらず、自制が称賛される世の中で実際に自制ができる人は、自制に困難を抱えて不遇な目に合っている人々を「自業自得だ」と考えてしまうかもしれない。
植原亮『セルフコントロールの教室 』P368