実家にまだ使えるレコードプレイヤーがあったので、生まれて初めて自らの手でレコードをかけた。親父のコレクションを物色して見つけたのは、ミュシャ風の絵がジャケットになったドイツのプログレバンドのミニアルバムだった。
「いまだノヴァーリスを知らぬあなた。このアルバムに針を落とす時、そう、その時から神話は蘇る。」
大仰なライナーノーツに書かれた「針を落とす」という表現とか、親父からプレイヤーの使い方を教わる時に口走る「針圧」とか「回転数」とかの言葉にいちいちテンションが上がってしまう。
しかし問題は、この家にハードロックとプログレしか無いこと。音楽への好奇心と、平穏への希求が完全にトレードオフ。