だからこそ、音楽は不思議なのです。同じ曲でも、ある日には胸が熱くなり、別の日にはただ静かに沁みることがある。
転調や和音の出来事そのものは同じでも、そのときの身体状態や記憶、そして脳の読み取り方によって、感動の立ち上がり方が変わってしまう。
音楽は耳に届くのに、感動は胸や腹の内側で完成するそう感じられる瞬間があるのは、脳が内臓の状態をただ受け取るだけでなく、その状態を内側で組み立て直しながら世界を感じているからだと考えられます。
大黒達也『言葉にならない感動を科学する 人はなぜ音楽に揺さぶられるのか』(中央公論新社,2026)